第63回出版UD研究会 2022-08-06
村上 真雄 (murakami@vivliostyle.org)
一般社団法人ビブリオスタイル代表理事
一般社団法人ビブリオスタイル 代表理事 村上 真雄
CSS組版とは、Webページを記述するのに使われるHTMLとCSSで、本のページの組版を可能にする技術。
電子書籍の標準形式であるEPUBも、その中身はHTMLとCSS。(それにその他の必要なファイルをまとめてzip形式で圧縮したもの)
WebもEPUBも、アクセシビリティがとても重視されている。
CSS組版によりHTMLとCSSで紙の本も作れるということは、
読み手のニーズに合わせてスタイル(CSS)を変えられる。例:
Vivliostyleが生まれる前から、CSS組版は一部では実用化されていた。
例えば、XML文書自動組版に利用されているアンテナハウスAH Formatterは、XML専用の組版仕様とともにCSS組版もサポートしており(2009年から)、有名なところでは米オライリー社の書籍制作システムに組み込まれて利用されている。
しかし、それは個人が気軽に使える製品ではない。
→CSS組版の普及には、だれでもオープンに使えるものが必要
現在のWebブラウザには、HTML+CSSでの高度なレイアウト機能が備わる。印刷機能を持ち、PDF出力も可能。
→ブラウザだけでもCSS組版は可能!
しかし、本のページの組版のための機能はCSSのドラフト仕様はあっても(CSS Paged Media仕様など)ブラウザにはなかなか実装されない。
それなら足りないCSSの組版機能をJavaScriptで実装して、本の組版もブラウザで可能にしよう →Vivliostyleプロジェクト
2018年から現在の開発体制:コミュニティーベースでオープンな開発。その管理のため一般社団法人ビブリオスタイル設立。
ボランティアの開発貢献者たちにより開発が進んでいる。
主なコミュニティー活動:
年2回の「Vivliostyleユーザーと開発者の集い」でこれまで発表されたVivliostyle利用事例から:
「マンガでわかるRuby」のCSS組版・制作秘話(湊川あい+よう)/開発者とユーザーの集い 2019夏
COVID-19に対する公衆衛生教科書の迅速な出版(ドイツ)/ユーザーと開発者の集い 2020秋
商業出版『そろそろ常識?マンガでわかる「正規表現」』の制作(大津雄一郎)/ユーザーと開発者の集い 2020秋
小説執筆におけるVivliostyle活用(藤井大洋)/ユーザーと開発者の集い 2022春
これまでのVivliostyleプロジェクトの中心は、CSS組版を実現するJavaScriptライブラリVivliostyle.jsと、それを使うための以下のツール:
Vivliostyle Pubで作った本の印刷製本がスムーズにできるよう、印刷製本サービスのmybooks POD(欧文印刷株式会社)と提携あり→ https://pod.mybooks.jp/
ほかでも、同人誌印刷を扱っている印刷所ならばVivliostyle Pubで出力したPDFからの印刷・製本が可能なはず。
現状はまだアルファ版(=開発途上だけどテストのために公開したもの)で、まだできていない機能が多い:
CSS組版をもっと簡単にして、だれもが使えるものにするのが目標だけれども、今のアルファ版の現状ではまだまだ難しい。
当面は「CSS組版」の知識がある程度あるような人たちに(技術同人誌を作る人たちなど)に使ってもらいながら開発を進めて、目標に近づけたい。
よろしければ、Vivliostyle Pubアルファ版を使ってみてください→https://vivliostyle-pub-develop.vercel.app/
GitHubアカウントが必要だけれども、Vivliostyle Pubアルファ版ユーザーガイドで、その取得方法から説明してます。
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